2020/5/18~ 市村武美
新型コロナウイルス禍の教訓:新興ウイルスの暴走をどう防ぐか
新型コロナウイルス感染症パンデミックは、世界の社会経済活動に計り知れない程大きな影響を及ぼしています。
この大きな変化は、私たちの日常風景の一部と化してしまいました。人類はウイルスと戦うのではなく、共存・共生という論説が近ごろよく見受けられます。またアフターコロナ・ポストコロナいった言葉も見受けられます。また、正確には 「ウイズコロナ」が現実に近いと国内外の識者が指摘しています。
南米やアフリカ諸国では拡大が加速しています。流行拡大が収まった国や地域では第2波を警戒しながら徐々の社会・経済活動の再開を始めています。コロナ渦が長期化しいつまで続くのか不明の状態では社会経済システムの崩壊を招くからです。
先進国は個々にワクチン開発を加速していますが、国家戦略や私企業戦略に使われる気配があり、貧民層に行き渡るための対策が必要です。これができなければ、最終的に大半の地球人が感染して多く犠牲者をうみ、生き残った人が抗体をもち、新型コロナ禍が収束することになるのでしょうか。
スウェーデンは抗体をもつ人が一定の割合に達すると感染の拡大にブレーキがかかり収束に向かうとされ、経済活動を制限しない政策をとっています。基本再生産数(1人の感染者が新たに何人に感染させるか)を2.5として、感染の広がりを求めると、全体の6割程度の人が抗体(免疫)をもてば感染が収まるとされていました。
感染が再拡大する第2波(この意味は?)への懸念が広がる中、経済活動と感染対策を両立する試金石になっています。この2.5という再生産数の研究は実際の社会で実証されていません。加えて、感染者でも免疫が長期渡り保たれず集団免疫は期待しにくい状態です。
現在、収束と終息の違い、使い分けが理解できません。私はウイルス自身が活動を低減または停止することを終息としています。再生産数が1になれば拡大は収束するでしょうが、終息ではありません。
今、あらためて新型コロナ渦の教訓をかみしめなければなりません。
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以前から感染症には、開発原病(開発が生態系を乱したことに起因する疾病)としての側面がありました。近年、急速な地球温暖化による異常気象が加わったことによって、新興感染症の発生が増加すると懸念されれています。
霊長類学者のジェーン・グドール博士は、森林破壊によって多くの動物たちが接近して生息せざるをえなくなり、その結果として感染病が動物から動物へと伝染を繰り返し、最終的に人類に伝染する可能性が高まっていると語っています(2020/4/12)。
今回の新型コロナウイルスの出現はその序章であり、新たな凶悪ウイルスが出現の機をうかがっていることに警戒しなければなりません。
この新興コロナウイルスはインフルエンザウイルスと異なり、SARSやMERSのように動物からヒトに感染した過去のコロナウイルスと同様に諸臓器・組織に広がっています。
サイトカインストームを起こし免疫の暴走、ときには急速な重症化を誘発します。さらに半月ほどで変異し、いまだに正体がつかめないなど、恐怖をあおるウイルスです。
ウイルスが体内に侵入すると自然免疫が即対応します。同時に獲得免疫の稼働準備が始まります。ウイルスの体内侵入量(攻撃程度)と年齢・体調などにより、この初戦にヒトが勝てるか負けるかが決まります。
負ければ発病です。獲得免疫が稼働できるようになるのは、ウイルス侵入から2週間程後です。新興ウイルスの体内侵入を緩和する医薬学的方法はプレワクチンはなく、物理的な方法の「三密」でどうにか爆発的な感染拡大を抑えています。
生活居住環境を消毒しても、その後にウイルスが付着すれば元の木阿弥です。
社会経済活動を再開すれば再び感染拡大の危機が起こります。専用のワクチンや治療薬開発をいくら急いでも感染拡大の速度には全く応じられないのです。専守防衛というと、攻撃を受ければそれに反撃する方法手段を講じて、相手の攻撃力を弱めるのです。しかしながら、新型コロナウイルスに対する反撃薬はなく無抵抗の状態です。
特に、高い致死性と感染力の高い飛まつ感染をする新興ウイルスが出現の機をうかがっています。豚由来のインフルエンザウイルスがヒトに感染して新型インフルエンザウイルスとなり、2009年に世界的な大流行となりました。以降、抗ウイルス薬の開発とワクチンの短期製造技術開発に焦点があてられていました。
中国を中心に養鶏関係者などがトリ・インフルエンザウイルスH5N1に感染、致死率は53%の強病原性です。このウイルスの表面に在る、感染にかかわる突起Hの182番目と192番目の2カ所のアミノ酸がヒトの受容体と合致するように変化していることがわかりました。
加えて、ヒトの体温で活発に活動できるように変異したH5N1亜型が見つかったのです。このウイルスのヒト型化(ヒト→ヒトの感染)によるパンデミックの可能性が最も高いと考えられました。これに備えて、2006年以降、政府はプレワクチンの製造・蓄積をおこなってきました。近年、中国などの感染者が減少する一方、2013年以降、あらたなトリ・インフルエンザウイルスH7N9亜型の感染が起こりました。想定外の変化で、致死率は39%の強病原性です。H7N9亜型も同様にヒト型化の変異を始めました。潜伏期間は10日程度であり、症状が出ない状態でも感染する飛まつ感染です。
国が備蓄するH5N1亜型のプレワクチン1000万人の大半が2019年度中に有効期限切れになるため、政府は新たに製造するプレワクチンのタイプをH7N9亜型に変更しています。また、このパンデミックに備えて新しい抗ウイルス薬アビガンの開発もおこないました。幸いに中国などのこの感染者数は低減状態ですが、ヒト型化していつ大流行を起こすのか全くわかりません。
また、中国で新型ブタインフルエンザ(G4H1N1)のヒト型化が懸念されています。このウイルスは、2009年パンデミックとなったブタインフル(H1N1、2012年までに28万人死亡)に似た遺伝子構造を持ち、またもパンデミックを引き起しうる重要な特徴を全て備えています。
このようなのとき、またしても想定外のウイルス、新型コロナウイルスが出現したのです。さらに、2種の豚コレラ、ASF(アフリカ豚熱、日本には発生なし)とCSF(豚熱、日本国内)ウイルスが猛威をふるっています。何れも強い感染力と高い致死率ですが、ヒトには感染しないといわれています。
豚インフルエンザウイルスが種の壁を乗り越えて新型インフルエンザウイルスになったように、豚熱のヒト型化の可能性は否定できないのです。現在、既知の病原性のウイルスは約6600種です。地球上には約3000万種の生物がおり、その数だけウイルスの活動戦略があります。ウイルスにとって格好の活動場はヒトであり、総攻撃が始まったのです。
飛まつ感染、さらに空気感染する新興ウイルスの出現は新型コロナウイルス同様、あるいはより大きな社会経済システムの崩壊を起こします。病原性ウイルスとの共生などありえません。
現在の医薬学ではこの新興ウイルスに対して無抵抗服従を余儀なくされます。新興ウイルスの攻撃は人類が初めて直面する最大の難関であり、反撃抗戦ずる新技術の開発は不可欠です。
この開発目標は第一にウイルスの体内侵入を防ぐことですが、この開発は極めて至難です。体内侵入に即応する自然免疫の賦活、他人の獲得免疫(抗体)の導入技術の開発は重要課題です。抗インフルウイルス薬のタミフル、リレンザ、イナビルはインフルエンザウイルスの細胞核内侵入も増殖も止められないが、増えたウイルスが細胞から飛び出すのを阻害する薬剤(ノイラミニダーゼ阻害財)で、対ウイルス反撃ではありません。
ゾフーザもウイルスの細胞核内侵入は止められませんが、ウイルスが増殖するために必要な酵素分子に結合して、その活性を低下または消失させる生理活性薬剤(Capエンドヌクレアーゼ阻害剤)で、初めての能動的な反撃薬です。
アビガンは他の抗インフルエンザウイルス薬が無効又は効果が新興・再興型インフルエンザウイルスが発生し、国が使用を容認した場合の薬剤で、核酸アナログで体内活動の増殖を直接阻害するRNA依存RNAポリメラーゼ阻害剤で、能動的な反撃薬です。
ウイルスの体内増殖を阻害する薬剤の機能は、本来もっている免疫(自然免疫、獲得免疫)機能に付加する画期的な「第2のウイルス防御機能」です。しかしながら、新興ウイルスに対する治療薬の開発は効果と副作用の確認に長期間を要し、応急の実用には適しません。このため、新型コロナウイルスに対してはアビガンなど他種の抗ウイルス薬の転用を模索しているのです。
今、人類は、新興ウイルス出現に即反撃できる手法手段開発に取り組なければならない時代をむかえたのです。
新型コロナウイルス禍は経済的な打撃に加え政治的な影響も甚大です。西側諸国と中国の間の矛盾や対立は冷戦後最悪です。さらに各国の内部でも分断が深刻化しています。
前述のように新型コロナウイルス以上の高病原性新興ウイルスが出現の機をうかがっています。このような時こそ国家間や文明間の対立を棚上げし、未来の地球人のためにウイルスの攻撃に反撃する国際的な技術開発のセンターの設立を急がなければなりません。
新型コロナ禍対策のワクチン開発や特効転用薬探索においても各国各組織が個々に競合しています。これが人間社会の本質なのでしょうか。
WHOはワクチンについて技術の公開を提案しています。今後の新興強病原性ウイルスへの反撃技術の開発は人類初の挑戦であり、利害を超えて人類が団結しなければならないのです。このセンターは、先ずは、体内および細胞核内に侵入した新興ウイルスにの活性制御にかかわる応急的な手法手段について、世界中からの提案を受けることであり、次いで実用化の新しい挑戦を開始することです。
私は、1997年12月、化学薬剤を一切使用しない情報転写伝達方式でバキュロウイルスsp.(環境感染、致死率ほぼ100%)の活性制御に成功しました。
このウイルス感染は世界中におよび、多くのエビ養殖場が閉鎖廃業に至るほどの決定的な損害を与えました。以降2000年まで、この成果の再現実験研究と実用化の研究を行いました。
この新技術をBIO-IT技術(生命情報伝達技術:生命現象に影響を及ぼすすべての情報の記憶と伝達技術。委細はホームページ参照)と呼んでいます。その後、急速に感染拡大が終息したことと、この新技術が常識外であったこと、実験研究の信頼性に疑義がもたれたことなどにより、関心が薄れて協力・協同研究組織を得ることができませんでした。
加えて体調を崩して休息、2006年以降からヒトに侵入したのウイルスの活性制御の臨床研究を再開しました。この研究は親族、知人友人や弊NPO会員の要望により行うもので、成果について統計処理ができる程の事例集積に至っていません。しかし、事例は少数かつ数種のウイルス感染種であっても、新技術処置は体内侵入のウイルス活動を制御できる可能性を示唆しています。
ウイルスの増殖阻害剤に次いで第3のウイルス防御機能の開発です。この新技術開発の歴史は浅く多くの研究課題を抱えています。
現在、新型コロナウイルス禍の真っ最中であり、新技術の有効性を確かめ、技術の向上開発の好機です。さらに、新技術は新興ウイルス対策に寄与する多くの特徴をもっています。それは、ウイルスの変質の即応記憶とBIO-ITWATWERの量産などです。
京大の奥野恭史教授らは7/3スーパーコンピューター富岳を用い新型コロナウイルス感染症の候補となる物質を数10種を発見した発表しました。これは、ウイルスの増殖に関係するタンパク質にくっつき、その働きを防ぐというもので、治療薬として有望と考えられる数10種を絞り込みました。
この中には、新型コロナ向けに世界で臨床試験が進む寄生虫駆除薬剤12種も含まれていました。今後は細胞を使った実験で薬剤の効果を詳しく調べ、臨床研究・試験について検討すると報じました。
第2号提案は前述のウイルス増殖阻害酵素にかかわるものと推察されます。これは原核細菌の機能から学んだ技術であり、ゲノム編集という画期的な生命科学の進展をもたらしました。
第1号提案はウイルスの機能から学んだ技術であり、分子生物学から量子生物学への進展をもたらすであろうと考えています。この両提案の基本的な違いは、第2号提案はヒトが主体で客体ウイルスの活動に働きかけるものです。一方、第1号提案はウイルスが主体で、客体であるヒトがウイルス自体に活動を自制させるものです。
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☆近々出版の拙著「難病と凶悪ウイルスに勝つ」に緊急添付提案した、「新型コロナウイルス対策の戦略と戦術」を別添しました。
☆本論から離れますが、第1号提案の第3のウイルス防御機能は、ウイルス以外の病原性細菌感染症、内因性疾病などの防御機能や平衡機能賦活(自力更生力強化)にも適応する機能です。
以上